2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

【読んだ】待鳥聡史『政治改革再考 変貌を遂げた国家の軌跡』

面白かった。90年代からの一連の政治改革(行政改革/日銀大蔵省改革/司法制度改革/地方分権改革)についての本はこれまでも読んだ事があったけど、本書は「土着化」という概念を元にそれらを包括的に分析する。まず一連の改革の根底には、著者が「近代主…

【読んだ】志田陽子『「表現の自由」の明日へ 一人ひとりのために、共存社会のために』

■民主主義という概念が超ロジカルなものなのだと再確認した。民主主義のコンセプトや、表現の自由の必要性みたいな理念と並行して示されるのは、それが法体系の中でどう論理的な整合性をもって運用されているのか、という話だった。むしろ強調されていたその…

【読んだ】暮沢剛巳『美術館の政治学』

一言で言えば、日本の美術館や文化施設を例に、それがどんな政治的/経済的背景の中で作られ、運営されてるのかという本。東博や民藝館から、国立新美や金沢21世紀まで時制は幅広いが、上梓されたのが2007年なので後者については進行形で書かれている。地方…

【読んだ】遠藤周作『海と毒薬』

生体解剖の描写は執拗で露骨でショッキングで、読み進めるのに時間がかかった。そしてこの露骨さは、本作の構造上絶対必要なのだと思う。上田と戸田の内面告白では、例えば宗教による行動規範の欠如を埋め合わせて(しまって)いるものが曲がりなりにも示さ…

【読んだ】マルクス・ガブリエル『なぜ世界は存在しないのか』

あらゆる物は「意味の場」の中にしか存在しない。我々はこの「意味の場」とセットになった物を認識しているが、それ自体が「物自体」である(故に我々は物自体を認識できている)。この「意味の場」は多様で、それを統括する「世界」など存在しない。カント…