2018-01-01から1年間の記事一覧

【読んだ】暮沢剛巳『オリンピックと万博 巨大イベントのデザイン史』

▼日本に「デザイン」という概念を普及させたのは1960年に開かれた「世界デザイン会議」であり、そこではデザイナーのミッション、とりわけ社会的な責務について確認されたと。1964年の東京五輪と1970年の大阪万博はその概念の実体化をする機会だったと。本書…

【読んだ】中北浩爾『自民党 「一強」の実像』

▼頻繁に言われる様に、かつての自民党政治の特徴は「(1)ボトムアップとコンセンサスを重視する意思決定」と、「(2)派閥政治によって生まれる党内の多様性」であり、これが利益誘導政治をもたらしていたと。それが94年の政治改革、小泉改革、民主党への政…

【読んだ】伊藤亜紗『目の見えない人は世界をどう見ているのか』

▼「情報」と「意味」の違いについて。「情報」が客観的でニュートラルなものであるのに対し、「意味」とは「情報」が具体的な文脈に置かれた時に生まれるものである(p31−32)。おそらく本書は、個人の身体(と環境のコミュニケーション)を文脈として捉えた…

【読んだ】太下義之『アーツカウンシル アームズ・レングスの現実を超えて』

▼アームズレングスなる原則があると。本書の文脈においてこれは、助成団体たるアーツカウンシルが政府と一定の距離を保つ事を指すと。でもまぁ普通に「え、アーツカウンシルって公的機関っぽいけどそんなんできるん?」ってなるけど、まぁ案の定絵に描いた餅…

【読んだ】清水高志『実在への殺到』

▼物凄く大雑把に言って、思弁的実在論、オブジェクト指向存在論、人類学の存在論的転回等々、ここ数年の人文学の潮流は、カント的な主客図式を乗り越えるためにモノと人間の様相(フラットネス)を再考しつつ、主体客体の概念を練り直しているのかと。本書は…

【読んだ】勝川俊雄『魚が食べられなくなる日』

▼なるほどこれは評判通り面白い。問題化されているのは水産行政の無策っぷりな訳ですが、その分析を通じて、今の日本全体が抱える構造的問題が浮かび上がる。▼日本の漁業の現状について。日本の海洋資源は枯渇しているが、何ら対策を打っていない。一刻も早…

【読んだ】橋本健二『新・日本の階級社会』

▼要するに経済構造の矛盾が非正規雇用の人に集中してますよ、という割とマルクスさんなお話。定義やニュアンスの説明に色々不足はあるなと思ったんですけど、しかし「階級」という言葉に政治的なインパクトを意図されてるのは明らかかと。ただ同時に著者は、…

【読んだ】小泉義之『あたらしい狂気の歴史』

▼大前提として著者は、狂気を肯定し、おそらくは期待もしている。しかしその狂気は、かつての左派知識人が期待を込めたものとは違うと。かつて、狂気は言語の問題として捉えられ、知識人はそこに人間解放の夢を見た。しかし、現在の狂気(とされているもの)…

【読んだ】ジル・ドゥルーズ著 國分功一郎訳『カントの批判哲学』

▼訳者解説が白眉。「ここからここまではカントの話」「ここからドゥルーズの話」っていうのをものっすごい明確にした上で、この本が後のドゥルーズの論にどう引き継がれていくのかというのがすごくよく分かる。▼カント先生の哲学に出てくる能力って、第1に「…

【読んだ】ロバート ヒューイソン『文化資本 クリエイティブ・ブリテンの盛衰』

▼ロンドンオリンピックに前後してイギリスの文化政策周りで起こった事柄をルポ的に書いた本。文化論的な話で結論づけようとしているけどそこはなんかとってつけた様な話で(※)、基本的には人事と予算配分の政治的な動きを追う感じ。訳者もあとがきで書いて…

【読んだ】熊野純彦『カント 美と倫理とのはざまで』

■基本的には、第三批判を主としてカントの哲学概念を解説する本。カントって多分、色んな概念を他の概念との関係の中で定義付けていった人だと思うんだが、第三批判でのそれは病的に精密かつラディカルだったっぽい。なのでこの本も基本的にはとことん論理的…