2017-01-01から1年間の記事一覧

【読んだ】立岩真也『自閉症連続体の時代』

■病の定義や、診断や治療がなされる時、そこには一定の社会的な権力性がある事を著者はまず認めている。それは「医療化批判」としてこれまでも言われてきたことなのだけど、しかし一方、こうした社会構築的な医療的対処にはメリットもあると。例えば生理学的…

【読んだ】中尾拓哉『マルセル・デュシャンとチェス』

■読書に限らずこういう態度ってあまり良くないなと思ってはいるのだけど、やっぱチェスのルールと幾何学への理解が不足してると結構つらい。総論に関しては迷う事はなかったのだけど、しかし1番スリリングであろう個別の作品分析に関してあやふやなので悔や…

【読んだ】萱野稔人『死刑 その哲学的考察』

■おそらくは根源的な問題意識として、「議論とはどうあるべきか」という事があるのだと思う。冒頭で「死刑の是非をめぐっては賛成か反対かの二つの立場しかない」(P15)とした上で、賛成派と反対派のいずれの主張にも誤謬や詭弁が含まれることをテンポよく…

【読んだ】吉見俊哉『「文系学部廃止」の衝撃』

■主張としては、「文系学部は必要、なぜならば文系は「役に立つ」から」というもの。■ただし、一連の文系廃止騒動に関しては、メディアやら文系の教員やらが神経反射的に安倍や文科省の批判に走ってるのはホントにダメで、そもそも「文系不要」の素地は前か…

【読んだ】東浩紀『ゲンロン0 観光客の哲学』

■実は論旨はシンプル。西洋哲学がヘーゲル(シュミット、アーレント)的な「成熟」した人間観を志向した結果、リベラリズムは失墜し、コミュニタリアニズム(トランプ的ナショナリズム)とリバタリアニズム(金融エリート的な欲望に基づくグローバリズム)が…

【読んだ】『最後の資本主義』ロバート・B・ライシュ

■ストーリーとしては、、、 【1】今のアメリカの市場はルール設定において超富裕層に超有利だと。要はロビイスト雇う金がある激烈少数派がやりたい放題で、例えば著作権70年的な話が国内的にも国外的にも腐るほどあると。結果として、富の配分が上から下では…

【読んだ】千葉雅也『勉強の哲学 来たるべきバカのために』

■勉強とは「アイロニー=ツッコミ=根拠を疑う事」という縦の軸と「ユーモア=ボケ=見方を変えること」という横の軸の双方を拡大する事だと。とはいえ双方ともに拡大し続ける事は不可能で、有限化が必要だと。ここでアイロニーを強制的に切断するのが「決断…

【読んだ】白波瀬達也『貧困と地域 あいりん地区から見る高齢化と孤立死』

■同じく中公から出てる『社会とは何か』という新書にある通り、「社会」とはシステムではなくてプロセスなんだな、という事を強く感じた。無論、あいりん地区の状況が政策の帰結として生まれてきた側面も無くはないんだが、同時にどの場面でも混在する様々な…

【読んだ】森山至貴『LGBTを読みとく: クィア・スタディーズ入門』

■お題目としてではなく、各論に至るまで「学問知なめんな」というコンセプトが一貫してるのが痛快。冒頭、差別や暴力の問題について「道徳」や「良心」の問題として扱われがちな事を批判し、知識に基づいた判断や行動が必要であると指摘される。無論それは個…

【読書メモ】『ドゥルーズの哲学原理』(随時修正してく)

ドゥルーズの哲学原理 (岩波現代全書)作者: 國分功一郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2013/06/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (28件) を見る■超越論的経験論について 【カント的な主体の「発生」への視座】 ・カントは経験の条…

【読んだ】國分功一郎『ドゥルーズの哲学原理』

■多分、日本のドゥルーズ受容って、良くも悪くもセゾン的というか、消費社会文化的に紹介されたイメージをずっと引きずっていたんでしょうね。なのでドゥルーズの入門書や解説書ってパフォーマティブにその思想を展開するものが多く、良く言えばスリリング、…

【読んだ】水野祐『法のデザイン 創造性とイノベーションは法によって加速する』

■リーガルデザインというコンセプトについて。法を規制や創造の阻害要因と捉えるのでは無く、寧ろイノベーションを加速するための適切な環境設計と捉えるべきだし、(大陸法的と言われる日本においても)今までも実はそうやったんやでと。加えて既存の法体系…

【読んだ】福間良明『「働く青年」と教養の戦後史』

■多分今自分がやってるのって「読書と勉強の間くらいの事を勝手にやる」って事なんだが、やっぱそれ良いな、と思った。本書は、戦後、特に地方から集団就職で上京した若者の間で読まれた「人生雑誌」について分析するもの。竹内洋が析出した様なエリート的教…

【観た】chim↑pom「The other side」

■無人島プロダクションでchim↑pomの個展「The other side」を見てきた。アメリカ国境スレスレにあるメキシコの民家を訪ね、住民と交流しつつツリーハウスを作るドキュメンタリーと、その映像を軸にしたインスタレーション作品。↓ MUJIN-TO Production■インス…

【読んだ】森村進『自由はどこまで可能か=リバタリアニズム入門』

■確認したい事があって読み返したんだが、ジャンプの漫画みたいな本だと思った。最初に勇者たるリバタリアニズムをキャラ設定し、「遺産相続」とか「司法制度」とか「婚姻制度」とか諸々のフィールドに勇者を持ち込み、RPG的に仮想敵(リベラリズム等々)を…

【読んだ】小泉義之『病いの哲学』

■感動的ではあるものの、どう判断すれば良いのかには迷う。冒頭で示される通り、本書は「生と死」という二分法を批判し、その間にある「病気の生」「病人の生」を肯定して擁護するもの。前半部ではソクラテス、ハイデッガー、レヴィナスが「死に淫する哲学」…

【読んだ】稲葉振一郎『「資本」論―取引する身体/取引される身体』

■結論は「無理してでも「労働力=人的資本」を所有可能な財産とみなし、人々をその財産所有者とするべき。福祉国家が保障するべきは人々の生存ではなく、労働力=人的資本の所有者としての権利やで」って事かと。無論こう書くと「ネオリベやな」と思うし、貧…

【読んだ】大塚英志『物語消費論改』

■2012年の本。冒頭、1989年に上梓した物語消費論について「マーケティングの理論であり、それは即ちプロパガンダの理論だった」と自省的かつ露悪的に位置づける事から始まる。89年と2012年で異なるのは、「断片的な情報」から「大きな物語」を構築するプロセ…

【読んだ】小泉義之『生殖の哲学』

パンクである。「リベラリズムは使えない、科学者もわかってない、フェミニストはヌルい」みたいなな感じで全方位に刃を向ける。主張としては生殖技術および生体情報のコモンズ化、性と生殖の分離、等々。『生と病の哲学』の方が時を下っているので、豊富な…

【読んだ】魚川祐司『仏教思想のゼロポイント』

■とても面白かった。僕は全く仏教には通じていないのだけど、おそらくとてもリベラルな書き手なのだと思う(というか、仏教それ自体をとてもリベラルな教義として紹介していると思う)。■前半部で仏教の(非)論理体系が説明されんだけど、おそらくは西洋哲…

【読んだ】田崎英明『ジェンダー/セクシュアリティ』

そのうちまた言葉でまとめたいけど、さしあたって「超面白すぎた」という興奮は書き留めておきたい。キーのひとつが「栄養的生」という概念なんだけど、これが面白かった。要はアガンベンなんだけど、ビオス/ゾーエーの区分を踏まえた上で更にラディカルに…

【読んだ】椹木野衣『日本・現代・美術』

■再読。広義の文化論として捉えると特異性が見出しにくく、重複も多く冗長な印象があったのだけど、しかし括弧つきの「美術」という名の下に行われている展示や批評と対照させて読んでみると、影響力は甚大なんだなと改めて。■「悪い場所」というコンセプト…

【読んだ】小泉義之『ドゥルーズの哲学』

■「微分的なもの」というコンセプトについて。「微分的なもの」=「差異を生産する場」であり、現実的ではなく理念的、顕在的なものではなく潜在的である。ドゥルーズが微分的なものののリアリティを掴もうとする時、それは「発生論的な志」を復権することだ…

【読んだ】ジークムント・バウマン『リキッド・モダニティ』

ご本人が液状化なされたと聞きパラパラと(不謹慎)。 新しく出現した時間の瞬間性は、人間の共生形態を激しく変化させた。とりわけ、人間の集団的事象とのかかわり方、そして、ある事象を集団的なことがらにする方法の変化はいちじるしかった。 現代人は「…