【読んだ】福間良明『「働く青年」と教養の戦後史』

「働く青年」と教養の戦後史: 「人生雑誌」と読者のゆくえ (筑摩選書)
■多分今自分がやってるのって「読書と勉強の間くらいの事を勝手にやる」って事なんだが、やっぱそれ良いな、と思った。本書は、戦後、特に地方から集団就職で上京した若者の間で読まれた「人生雑誌」について分析するもの。竹内洋が析出した様なエリート的教養主義に憧憬を抱きつつ、同時にその反発から独自の教養文化と読者共同体があり、それを「反知性主義的知性主義」と名付けて分析する。それは貧困と劣悪な労働環境の中で、階層上昇への憧憬と諦念の混じり合いの中で生じたんだが、高度成長に伴い労働環境も進学率も改善し徐々に衰退していく。

■多分、エリート的な教養への憧憬が消滅した理由は階層上昇が可能になったからではなく、階層構造を固定化したまま所得が底上げされたからなんだと思う。この辺は吉川徹の『学歴分断社会』を読み直したい。その後読者共同体に変わったのはラジオの深夜放送とかなんだろうなあ。因みに最後に現在の状況との比較があり、「反知性主義」(と呼ぶ事自体どーなのって話もしてるんだが)との違いとか指摘される。個人的には、コンテンツが売れなくなった時に実利的かつ高齢者を狙える健康モノに舵を切る、という顛末がまさに今起こってる事と重なってアレ。

学歴分断社会 (ちくま新書)

学歴分断社会 (ちくま新書)