【読んだ】水野祐『法のデザイン 創造性とイノベーションは法によって加速する』

法のデザイン?創造性とイノベーションは法によって加速する
■リーガルデザインというコンセプトについて。法を規制や創造の阻害要因と捉えるのでは無く、寧ろイノベーションを加速するための適切な環境設計と捉えるべきだし、(大陸法的と言われる日本においても)今までも実はそうやったんやでと。加えて既存の法体系が状況とミスマッチを起こしがちな状況においては、現状追認的な法整備ではなく(「法の遅れ」と言うらしい)、「余白」を意図的に作っとく事が有効やと。で、ITやネット云々に典型的な様に、既存の法では対応できない様なグレーゾーンが広がってる今がチャンスですよ、と。

■ただ、一般向けの啓蒙書かっていうと多分それもちょっと違くて、↑の様なマニュフェスト的な話は最初の数十頁で済ませ、その後は「音楽」「アート」「写真」みたいな分野ごとに、今のトレンドをひたすら紹介していく構造。各論については面白がれるものも面白がれないものもあったし、正直「今これがイケてる」的なものを延々みせられた印象もある。もっとも「イントロ」の末尾にも書いてる様に、やっぱ所謂クリエイターや「その筋の人」に向けてる感じがしたし、同時に「誰でもクリエイターなんやで」とはまだまだ言い切れないんだな、とも感じた。

■個人的に膝を打ったのは、ティルマンスみたいな抽象写真が流行っているのはウェブ上での写真氾濫に伴って肖像権意識が変化したからとか(写真)、現行の建築基準法がリノベーションに対応しにくいのは「ハードを信頼し、ソフトを信頼しない」という世界観に基づいているからとか(建築)、マイナンバー制度ってクソだし監視権力のミクロ化でもあるんだが、一方ではこれまでの個人把握のツールだった(家制度の名残たる)戸籍制度を事実上無効化するかもとか(家族)、まあ色々あった。

法のデザイン?創造性とイノベーションは法によって加速する

法のデザイン?創造性とイノベーションは法によって加速する