【読んだ】森村進『自由はどこまで可能か=リバタリアニズム入門』

■確認したい事があって読み返したんだが、ジャンプの漫画みたいな本だと思った。最初に勇者たるリバタリアニズムをキャラ設定し、「遺産相続」とか「司法制度」とか「婚姻制度」とか諸々のフィールドに勇者を持ち込み、RPG的に仮想敵(リベラリズム等々)を…

【読んだ】小泉義之『病いの哲学』

■感動的ではあるものの、どう判断すれば良いのかには迷う。冒頭で示される通り、本書は「生と死」という二分法を批判し、その間にある「病気の生」「病人の生」を肯定して擁護するもの。前半部ではソクラテス、ハイデッガー、レヴィナスが「死に淫する哲学」…

【読んだ】稲葉振一郎『「資本」論―取引する身体/取引される身体』

■結論は「無理してでも「労働力=人的資本」を所有可能な財産とみなし、人々をその財産所有者とするべき。福祉国家が保障するべきは人々の生存ではなく、労働力=人的資本の所有者としての権利やで」って事かと。無論こう書くと「ネオリベやな」と思うし、貧…

【読んだ】大塚英志『物語消費論改』

■2012年の本。冒頭、1989年に上梓した物語消費論について「マーケティングの理論であり、それは即ちプロパガンダの理論だった」と自省的かつ露悪的に位置づける事から始まる。89年と2012年で異なるのは、「断片的な情報」から「大きな物語」を構築するプロセ…

【読んだ】小泉義之『生殖の哲学』

パンクである。「リベラリズムは使えない、科学者もわかってない、フェミニストはヌルい」みたいなな感じで全方位に刃を向ける。主張としては生殖技術および生体情報のコモンズ化、性と生殖の分離、等々。『生と病の哲学』の方が時を下っているので、豊富な…

【読んだ】魚川祐司『仏教思想のゼロポイント』

■とても面白かった。僕は全く仏教には通じていないのだけど、おそらくとてもリベラルな書き手なのだと思う(というか、仏教それ自体をとてもリベラルな教義として紹介していると思う)。■前半部で仏教の(非)論理体系が説明されんだけど、おそらくは西洋哲…

【読んだ】田崎英明『ジェンダー/セクシュアリティ』

そのうちまた言葉でまとめたいけど、さしあたって「超面白すぎた」という興奮は書き留めておきたい。キーのひとつが「栄養的生」という概念なんだけど、これが面白かった。要はアガンベンなんだけど、ビオス/ゾーエーの区分を踏まえた上で更にラディカルに…

【読んだ】椹木野衣『日本・現代・美術』

■再読。広義の文化論として捉えると特異性が見出しにくく、重複も多く冗長な印象があったのだけど、しかし括弧つきの「美術」という名の下に行われている展示や批評と対照させて読んでみると、影響力は甚大なんだなと改めて。■「悪い場所」というコンセプト…

【読んだ】小泉義之『ドゥルーズの哲学』

■「微分的なもの」というコンセプトについて。「微分的なもの」=「差異を生産する場」であり、現実的ではなく理念的、顕在的なものではなく潜在的である。ドゥルーズが微分的なものののリアリティを掴もうとする時、それは「発生論的な志」を復権することだ…

【読んだ】ジークムント・バウマン『リキッド・モダニティ』

ご本人が液状化なされたと聞きパラパラと(不謹慎)。 新しく出現した時間の瞬間性は、人間の共生形態を激しく変化させた。とりわけ、人間の集団的事象とのかかわり方、そして、ある事象を集団的なことがらにする方法の変化はいちじるしかった。 現代人は「…

【読んだ】苅部直『移りゆく「教養」』

■冒頭のネタ振りが面白い。ある病気の患者家族会が講演で医者を呼んだと。そしたら所謂啓蒙的な内容ではなく、学会の資料をそのままトレースした専門的な内容を発表したと。しかし聴衆である患者家族は臆するどころか対等に質疑応答に臨んでたと。ここから教…

【読んだ】竹沢尚一郎『社会とは何か―システムからプロセスへ 』

まさに副題にあるように、社会を「システム」ではなく「プロセス」として捉える感じです。すっげー大雑把に言うと、「ホッブスとルソーじゃなくてスピノザ」「デュルケムじゃなくてタルド」みたいな感じなのかと。社会とは何か―システムからプロセスへ (中公…

【読んだ】吉川洋『人口と日本経済 - 長寿、イノベーション、経済成

■「やっぱ経済成長は必要、人口の増減と成長率は言う程相関しない、人口減ってもイノベーションで需要創出できんぜ」という事を下々の者に説いて下さっている本(稲葉振一郎の『経済学という教養』の分類でいくと「ニューケインジアン?」になるんでしょうか…

【読んだ】筒井淳也『制度と再帰性の社会学』

「○○を説明するのに××を例に考えてみましょう」という話の「××」が全部ガチってる感じが凄い。「制度」の観点から、経済学との対比で社会学を位置づけ直す感じですが、「誤解をおそれずに簡潔にいえば、経済学が制度を市場を補完するものとして、事後的に構…

【読んだ】筒井淳也『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』

■20世紀は経済活動を「家」から分離すると同時に、親密性については「夫・妻・子」すなわち「家庭」に閉じ込めたと。で、フェミニズム的な公的領域/私的領域の議論とかとは別に、公正の原理ってのは原理的に親密性と噛み合わせが悪く、どうしても不平等は生…

【読んだ】筒井淳也『仕事と家族 - 日本はなぜ働きづらく、産みにく

■結論としては「普通に考えて労働力増やさないと社会保障維持できないでしょ」という身も蓋もない話で、従って出生率上げないとやばいよと。70年代まで性別分業で維持できてた社会構造が崩壊した後、日本は丸抱えを維持したまま企業内の配置換えをうまく使っ…

【読んだ】藤井聡『新幹線とナショナリズム』

■この人の事よく知らないで読んだんですけど、安倍政権の参与やってた人で、その時に書いた本なんすね。なのでマニュフェスト本的な書き方なんですけど、今って「政治的な説得」を成立させるための論理を構築するのって本当に難しいんだな、と感じた。内容は…

【読んだ】佐々木中『戦争と一人の作家: 坂口安吾論』

折につけ読み返してくと思う。戦争と一人の作家: 坂口安吾論作者: 佐々木中出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2016/02/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る

【読んだ】飯尾潤『日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ』

2007年の本。民主党政権直前だけあって、政権交代の旗振ってる感凄い。戦後の政治体制下の意思決定はボトムアップアップと調整によって成り立っていて、政治家と官僚もズブズブではあるけど全体で見た時の安定感とバランス感が凄かったっぽい。多分、キャッ…

【読んだ】宇野重規『保守主義とは何か - 反フランス革命から現代日

「保守」なるものの定義が揺らいでるのは誰の目にも明らかですけど、そこで敢えてスタティックな定義付けを試みるではなく、「保守」なるものの思考様式を敷衍しながら思想史を見ましょう、という事かと。保守主義の特徴として挙げられる「過剰な主知主義へ…

【読んだ】菅野完『日本会議の研究』

■要するに動員のノウハウと経験値がエグすぎると。源流は学生運動の時の抗争+新宗教にあるんだけど、その後50年かけて(リベラル側が失敗した)草の根運動を成功させた結果が今ですよ、と。よく言われる「全社会的に右傾化しとる」みたいな話も眉唾で、比較…

【読んだ】大澤真幸『増補 虚構の時代の果て』

■確かにまーまー結構シンゴジラやった。見田宗介の解説曰く→「「すべては虚構である」という「ポストモダン」的な思考の核心でもあった相対化の徹底が、どのように直接的な「絶対性」の信仰へと反転するか、どのように短絡的な「現実性」の妄想を生むか、そ…

【読んだ】ジョック・ヤング『後期近代の眩暈―排除から過剰包摂へ』

話題になったのはかなり前だけど、ヘイトやらBrexitやらを受けて。論旨は前著『排除型社会』とほぼ一緒で、コミュニティの変化やら雇用の流動化やら存在論的不安と、そのバックラッシュとして本質主義や排斥が起こっとると。で、多文化主義とかリベラルの対…

【読んだ】白井聡『永続敗戦論――戦後日本の核心』

再読。挑発的な筆致も込みで、認識はこんな感じかと↓・右派は「敗戦」を否認し「終戦」と読み替え、同時に「戦後的なるもの」の否定を試みる振りをすると(顕教の次元)。しかしそれは屈辱的な対米追従が前提で、この構造がある限り戦後的なるものの否定など…

【読んだ】黒瀬陽平『情報社会の情念―クリエイティブの条件を問う』

■再読。マインドマップ的に散逸的な題材を接続する手つきは鮮やか。あまり良い読み方とは言えない事はわかりつつも、前半はポケモンGO、後半はシンゴジラと、色々社会的な事象と関連付けざるをえない感じ。とゆーか多分両者の作り手がこの手の言説を明らかに…

【読んだ】ガブリエル・タルド『社会法則/モナド論と社会学』

激アツ [asin::detail]

【読んだ】清水高志『ミシェル・セール: 普遍学からアクター・ネット

アクターネットワーク押さえときたい、みたいな卑近な動機で読んだ訳ですが、5章の貨幣の話が面白かった。元々古来の貨幣って減価貨幣(腐る通貨)で、それ故全ての価値が固定化せず、流通のネットワークも流動的やったと。減価貨幣って地域通貨の話で目にし…

【読んだ】古谷実『ヒメアノ~ル』

ファンタジーやなぁ。みんな過剰に思弁的で良い人なんだけど、そーゆー理解可能性とは無関係にグロテスクな事態は進行していく。前に読んだ時は感じなかったけど、これ読んでグッと来るって相当参ってるんじゃないだろうか。ヒメアノ~ル コミック 1-6巻セッ…

【読んだ】佐々木毅『アメリカの保守とリベラル』

多分2度目。クリントン政権が生まれた翌年の1993年刊。名著とは言われるけど基本は時事的。レーガンが失敗してからクリントン政権の誕生までの流れを、主にイデオローグの言説を追う感じで。70〜80年代に基本的に保守もリベラルも潰れたけど、多分この本では…

【読んだ】多木浩二『スポーツを考える―身体・資本・ナショナリズム

■読むの三度目位だけど内容濃い。エリアスはスポーツを「社会が暴力を飼いならす事」、すなわち非暴力化(=文明化)の過程としたけど、一方でそれは国家による暴力独占の過程ともパラレルで、それは見落としてたよねと。ともあれそれってジェントルマンとい…